かほるおばさん直伝の瓜の粕漬け

小さい頃から「塩尻のかをるおばさんの瓜の粕漬」はおいしくて宝物だった。毎年送ってくれていたが、子供達の口にはなかなか入らず、父が残したのを食べるのが楽しみだった。おばさんも高齢になり、もう漬けることはできなくなり、私達も口にすることがなくなった。しかし、どうしても食べたいので、元気なうちにとおばさんに電話で教わって作ってみることにした。これはその記録です。

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材料

白瓜 6Kg  掃除後 3.9Kg

うんちく:今回は10月に入ってから漬けたため、「隼人瓜」別名「千成り瓜」を使用。通常は白瓜というものを使うが、この収穫は初夏。一方、酒粕は、本来秋口に出荷される。ただし、本来の酒を作ったあと搾り取った粕とは別に酒粕のみ作る目的で作られているものが市販されている。それを使えば年中できることになる。

隼人瓜とはどんなものか、その育て方は ということに興味のある方は、ここをクリック

酒粕 4Kg(山梨県増穂町萬屋酒造)

うんちく:春鶯囀(しゅんのうてん)は、歌人与謝野晶子に由来する酒。漫画「おいしんぼ」でも紹介されている210年の歴史を誇る造り酒屋。何度も通って顔見知りになって、9月に熟成した酒粕が出たのを頼んでわけてもらったもの。

 ちなみに、瓜そのものには味がないので、味の決め手は粕と塩加減ということになる。準備万端、だが・・・そう簡単にできるとは思えない・・・

塩(瀬戸のほんじお) 240g
焼酎(35度) 1合位
三温糖 1Kg


作り方(第一回目試作)
2002/10/4
材料がそろう。貴重な春鶯囀(しゅんのうてん)の酒粕。市販されているものとは色も香りも全然違う。
「隼人瓜」が伊豆の知り合いから届く。サッと水洗い。この時点で6Kg

●やっぱり初夏の白瓜が良い。ここが改良ポイント。

作業工程1
下ごしらえ

両端を切って、こすりつけアクを取り洗い流す。これはおまじない程度。
種とワタをスプーンで掻き出す。 こんな状態。白瓜だとこの部分が大きな舟形になる。隼人瓜は身が厚く種が1粒のみ。だが、水抜きのため大きめにしてある。この時点で3.9Kg
作業工程2
塩漬け
重さを量りその4%の塩を用意。
この船の所に塩を塗りつけ、その部分を上にして樽においていく。
覆い蓋をして重しを乗せ、2昼夜おく。
一般には1昼夜置く説と5昼夜置く説がある。粕漬けのノウハウは千差万別なのだ。やってみなければ分からないし、好みの差である。
水がでて半量以下になった瓜をとりだし、ざるに乗せ水を切る。
 
試しに切って食べてみると、辛い。・・大丈夫かなぁ、と思うが口が曲がるくらいで正しい。
ひっくり返して乾かし、それから1つづつふきんで綺麗に拭く。  ちょっと水切りが足りなかったような気がしてそれが心配である。

●2昼夜乾燥させる。または、扇風機を使って1昼夜。ここが改良ポイント。常に風を当てていないとカビがでる。

作業工程3
本漬け

4Kgの粕に対して1Kgの砂糖を加える。少し堅めなので、焼酎180cc(35度の果実酒用)を加える。よく練り合わせる。ここで、味見をする。好みで砂糖の量を加減する。ほぼ良し。
焼酎によって殺菌効果も高まり保存性も良くなる。ただし苦くなる可能性があるがこれは砂糖によって緩和されるので問題ない。
粕を丁寧に船に積め、そちらを下にして樽においていく。
このとき瓜が乾いていないと粕となじまない。
丁寧に並べていく。空気が入らないように、ゴムべらで押しつけ、ならしていく。

秘伝?:このときの注意は、瓜が決して上下左右の瓜と互いに接触しないように最低1cmの粕を塗っていくこと。調べた限りこんなに丁寧に贅沢に粕を使っている人はいないようだが、松本近辺ではこれがおいしく作るコツとして常識のようだ。

漬け終わったら、ビニールで覆い、(このとき酒粕の入っていた袋を切って使うのよ、とおばさんは言っていたが、さすが昔の人はものを大切にする。)その上に炭を1つ乗せる。これは味噌造りで体得したセロ秘伝?の方法で、これによって雑菌の発生が押さえられる。 密閉蓋をして、上に、製法のメモ書きを貼り、はんこを押して完成。

できあがりは3ヶ月位後。

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結果発表:
 こうやって作ったものを3ヶ月後試食してみたが、実はおいしくなかった。おいしいと言う人もいたが私は失敗だったと思った。やはり浅漬けは白瓜でないと・・・

改良型:
 
作る手順、分量などはこれで良い。問題は材料と、乾燥期間。まず、この1回目の秋口の隼人瓜は、渋味が有り素直なうま味がない。やはり初夏の白瓜に限る。4〜8月までの期間で時々見かける。かなり育ちすぎの大きなものもあるがそれでも良い。なるべく緑のつややかなものを選ぶ。
 塩漬けした後の乾燥をたっぷりとやる。最低でも2日。扇風機の風を当ててやれば時間短縮になる。粕は何でも良い、よく売られている黄桜のでも十分。出来上がりは、本漬け後40日位だろう。これは気温などの条件によって異なるので、1ヶ月経ったら試食して見極めるしかない。漬けすぎないように、できた時点で私は全部引き上げて冷蔵庫にしまう。これで、半年ほど楽しめた。

これが白瓜の粕漬け

白瓜本漬け
白瓜を水で洗い、縦半分に切って種をとり、1昼夜乾かす(写真左上)。
瓜全体の重さの4%の塩を瓜の船の中にまぶし、切り口を上にして樽に入れ重しをして2昼夜おく。
それから乾燥させる。
それから本漬け。(写真右上)
つけ込んで1ヶ月。出来上がり。(写真下)
このような色で、こりこりした食感が残っていて美味。味は砂糖の量で好みが分かれるところ。

白瓜の粕漬け